春の気配。

2020年02月21日

ほったらかしてしまうんですよねえ。諭吉です。
もうついついブログ書くのをほったらかしてしまう最近です。
去年末の頻繁な更新が嘘みたい。

まあ、あんまりためになることも書かないブログですからねえ。ワハハ。
でも毎日みてくださっている方もどうやらいらっしゃるようですから、本当にありがたいことです。

最近諭吉はあの、携帯をやっと格安SIMに乗り換えました。

すごいですねえ、あれは。

これまで毎月14000円とか払ってたのがこれからは月額2000円とかそんなので済むんですもの。はっきり言ってメールだなんだといろんなことが無料になってきている昨今ですからいわゆるキャリアというものに依存しなくてはならない理由がないんですよね。なんだったら格安SIMの会社の方が愛想がなくていいですよねえ。

あのくらいほったらかしてくれた方がこっちとしても気が楽というもんです。個人的には。

さてさて、見てくださいましたか?

世界が歪んだ日。

一番新しい文章なんですが。

これは割と純粋な柔道もので、なんとなくこういう趣味になる原初の出来事を書こうと思ってタイピングし始めたらなんのことはない自分の体験とこれまでに見た「男が女に絞められる」という情景を混ぜ合わせたリアリティ満載の作品になりました。というものです。

少し試し読みなどしていただけたら、と思います。

『世界が歪んだ日。』

 保坂裕樹はほとんどまっとうに生きてきた。
小学生の頃には小学生らしく、中学生の頃には中学生らしく。そしてもちろん、高校生の頃には高校生らしく、その人生をまっとうに歩んできた。

小学校を卒業する頃柔道を始めた裕樹は中学を卒業する頃に彼女ができた。お互いに違う高校へ進学するけれどそれでも初めての彼女には気持ちがあった。

本当はサッカーがしたかったけど、父親の勧めもあって柔道を選んだ。裕樹はクラブ活動や町道場を通じて一生モノの友人を作ることもできた。

全国的には戦績が残るほどの活躍はできなかったけど、それでも高校の部活ではキャプテンを張って柔道部を盛り立てて行った。県大会の二回戦敗退というなかなか半端な成績をもって、裕樹の柔道部生活は終わりを迎えた。

およそ淀みなく過ぎていく青春のど真ん中で裕樹の世界は、突如歪んだ。

それはまだ夏休みの最中。

ほとんどの三年生は練習に顔も出さない中、裕樹は古巣である町道場における合同練習会に参加した。後輩たちとの緩やかな関係性も心地よく、その日は彼女も夏季講習だかで忙しいということだった。

ミンミンとセミの鳴く日本の夏であった。

空はとめどなく青く、桜の木には若々しい緑が生い茂っていて暑い夏の風に煽られるがままにザワザワと揺らいでいる。緑の匂いがムワッと鼻腔に吹き込んで、ただそこにいるだけで汗が滲むような夏色の天気だ。

朝10時から開始された練習は、準備運動や基礎練を通過して寝技の時間になる。中学生たちは平和に暮らしていたところ唐突に現れた「絞め技」の恐怖に逃げ惑うことになる。特に、合同練習となれば顔も見たことのない大きくて強そうな先輩たちがたくさんいることで怯えた表情を見せる中学生を見て裕樹は懐かしい気分に浸っていた。

いつの間にか、自分も恐れられる立場になってしまっている。

健全に引き継がれていく先輩と後輩の立場はみる向きによって見える世界が違っているのだな、と裕樹は蒸し暑い道場の中でふと思った。

すると、裕樹の袖を掴む手があったので振り向くとそこには胸に大学の名前が刺繍された道着を着た女の人が立っていた。

名前は「立川友香」というらしく、その凛とした表情は裕樹をどきっとさせた。どこか冷たそうでもあり、少女性も残りつつ、それでも裕樹には年上の女の人に見えた。身長も体重も裕樹より小さいだろうが先輩であることに変わりはない。

久しぶりに先輩というか、年上の人と組むことになった裕樹は気を引き締めた。彼女がなんのつもりで裕樹を引っ張ったのかはわからないが、それでも失礼のないようにしなくては、と思った。

だが、高校三年生ともなるといくら大学生とはいえ女子に劣る部分というのは実はほとんどない。力も、体格も、重さも無視できない柔道という競技の特性上高校生以上になるとその男女差というのは開く一方なのだ。

裕樹もそれは理解していたから、どのあたりで折り合いがつくのだろうと模索しているうちに先生の「はじめー!」という号令がかかり、寝技が始まった。

周りではドタドタと攻め方も守り方もわからない子供たちが取っ組み合いを始めている中、彼女は裕樹に対して脚を伸ばして座り、その細い手をさっと対角線の襟に伸ばしてくる。

裕樹は、「案外まじなんだ。」と思い、その手を掻い潜るように身を縮め、出来る限り前に引き出されないように注意深く身を守った。彼女は脚を裕樹の胴体に絡めつつ、まだ対角線の襟を右手でしっかりと掴んで、下から裕樹をコントロールする。

真夏の柔道場というのは暑い。

凄まじく暑い。

あっという間に裕樹は汗が迸るのを感じていた。それは彼女も同じことだった。体が密着している部分に体温が篭っていく。胴体に絡められた脚を抜けようと触れるとそれは紛れもなく女子の脚だった。

「おっと・・・。」

と、裕樹は油断した。その柔らかさは男のそれとは明らかに違う。同じように扱ってはアザを残してしまいかねない。と考えて、でも別にそういう競技だし良いのか・・・?という返答が頭の逆サイドから聞こえて戸惑った。

下から巧みに組みつく彼女の力はそれほど強くなかった。裕樹はやはり女の子は女の子なんだ、と少し油断しつつ上下をひっくり返されないようにそれでも慎重にことを運んだ。つもりだった。

するっ・・・

という音と共に世界は反転して行った。

まるで自分の力がそのまま自分に帰ってきたように、裕樹は足元を掬われるように脚で、足をひっかけられそのまま彼女の胸の中に押し詰められるようにしてほとんど完璧な縦四方固めに取られた。

『す、鋭い・・・。』

というのが裕樹の彼女に対する印象だった。特に力は強くないように感じられつつも要所を迷いなく極めるその頑強さはやはり技術だったのだろう。まだそのほとんどを力、腕力でやりくりする高校柔道の中にあって裕樹もまたその腕力を過信していた節があった。

が、彼女にはそれが通用しなかったのだ。

この事実は裕樹の人生にとって一つのエポックであった。

もがいてももがいても、彼女の胸に抱かれた首は微動だにせず、脚に絡まれた足はビクビクと彼女が許した範囲でのみ可動する。それは抵抗という行動の範疇には含まれないものだろう。

柔道を始めたばかりの小学生の頃には女の子に押さえ込まれることはよくあった。その頃はまだ男女の区別はあまりない世界だった。でもいつの頃からか、自分より強い女の子なんて、裕樹の周りには存在しなくなっていた。

が、現実はどうだ。

裕樹は現に立川友香に押さえ込まれて、一切の抵抗を封じられた上でその押さえ込みの苦しみを味わされている。

顔にかかる髪の毛の細さやその匂いが裕樹をさらに惨めな気持ちにさせた。そしてその腕力に頼らない、技術としての柔道に一気に焦燥を募らせた裕樹は体を跳ね上げて自分よりも軽い友香を体から無理やり跳ね除けようと試みた。が、首尾よく、とはいかなかった。

いかないまでも効果はあった。

裕樹は友香の体の中で、自分だけ反転することに成功した。

押さえ込みは、「解けた」。今度はうつ伏せになった背中に友香が乗っている状況だ。はあはあと息も荒くなった裕樹は必死に脇を固めた。が、彼女は迷うことなく首を狙ってきた。

「え・・・?」

裕樹は驚いた。

それは常識を逸脱している、とも思った。

ある程度の年齢になると、絞め技関節技というのはある種の意味合いを持たない限り練習では使わないものだ。その意味合いというのは、いわゆる敵意だったりする。懲罰や、因縁というような意味がなければその行為はある意味で喧嘩を売っているのと同じだという認識が裕樹の中に存在した。つまり、自分よりも強い相手にそれをやるということに抵抗があるものなのだ。報復を恐れる、という意味でも。

だが、友香は迷うことなくガードが甘い場所を狙った。

引退もして、気の緩みのあった裕樹はその絞めを全くノーガードで許してしまった。彼女は右手で裕樹の左襟を後ろから取ると、左手を裕樹の左脇からさして右襟を掴む。そして無理やり畳から裕樹の体を引き剥がすように持ち上げると、脚で後ろから腰の辺りを挟み込みながら自分の体の上に載せるように上下反転して、脚で裕樹の体を下にずり下げつつ完全完璧な送り襟絞めを作り上げた。

「・・・・かはっ・・・・!!!???」

ギリリッッ・・・・・

柔道着が擦れて嫌な音を立てる。

背中に彼女の胸の感触らしきものがある。脚に絡まれ、腕で抱かれ、彼女の体の中で一切の呼吸が封じられる。細い手首が首にめり込んで、頸動脈を閉塞させる。腕力による絞めの痛みは一切ない。

ただ、呼吸ができない。

裕樹はこれまで味わったことのある絞め技の苦痛とまるで違う感覚に困惑した。痛みがないまま、呼吸が停止している。息を吸うことも吐くこともできない恐怖。そして、何より女に首を絞められてそれを味わわされているという、一言で言い表すことのできない感情。

裕樹は、目の前の世界がグニャッと歪んだのを見て、慌ててマイッタをした。彼女の細い手首を右手で、叩き、もう逃げられません、僕の負けです、と許しを乞うた。

それは、裕樹にとって一つのエポックだった。

その強制的に、否応なしに目の前に突きつけられ、味わわされる屈辱。彼女の体に密着されて、抱かれ、絡みつかれ、呼吸ができなくなって、命乞いをするようにマイッタをして、、そして解放された裕樹は必死になって息を吸って、吐いた。

裕樹は必死に息をしながら一瞬ぼやけた世界を思って恐怖した。あのまま、もしマイッタしなかったら、できなかったら、しても許してもらえなかったら。自分はどうなっていただろうかと案じて心が震えた。

絞め落とされたことのない裕樹にとってその先の世界というのはあまりにも未知であり、絞め落とされるというのはイコールで死につながっているとさえ思っている裕樹には恐怖の対象でしかなかった。
裕樹は懸命に息をして、頭の中に残る静電気のような痺れを取り払おうとした。そして、今呼吸ができているのも友香がそれを許してくれたおかげなのだ、という被虐意識が裕樹の中に同時に芽生えていた。

友香はまるで練習が始まる前と変わらない、どこか冷めたような、冷酷で、少女性を残したような美しい顔でゼエハアと息をする裕樹を見て、早速組みついてくる。

「うわっ・・・。」

襲いかかってくる友香に恐れをなした裕樹は咄嗟に亀の体制を作った。彼女はまた、一切の躊躇も迷いもなく、亀になった裕樹の頭を跨ぎ、脚を脇に差し込み、ギュッと首と右腕を脚で挟み込んだ。


続きはこちらから。『世界が歪んだ日。

衝撃の第二話で終わります。今日書きます。

すごくリアリティのある文章が書きたくなったのはその前まで書いていた「少女の夢」シリーズがすっごくファンタジーの世界だったので、その反動かもしれませんなあ。

個人的には少女の夢シリーズってすごく好きで、本当は終わらせたくなかったんですがね。何か思いつけばまた多少強引にでも復活させたいシリーズではあります。同時に、また新しいファンタジーものを思いついているのでそれに関してもよろしくお願いします。


ちなみにこういう感じの強そうでない女の子が「世界が歪んだ日。」のモデルです。触り心地の良さそうな体が自分を締め付ける凶器と化す瞬間の恐怖をぜひ追体験してみてください。それは男に絞められるよりももしかすると怖くて苦しいことかもしれません。


諭吉でした。

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